再生誘導治療研究の第一人者からの大切なメッセージ
2010/02/23
こんにちは。
今週は温かくなるそうですね。
本日は先日某メルマガにて配信した田畑先生からのメッセージを掲載します。
企業側、だけでない、
研究者、だけでない
通訳者ならではの視点で再生医療について書かれています。
研究に携わる方も、そうでない方も、
一般人の方にも面白い内容になっていますよ。
┏┓
┗■ 再生誘導治療研究の第一人者からの大切なメッセージ
(京都大学 再生医科学研究所 田畑泰彦)
──────────────────────────────────────
iPS細胞の名前が知れわたり、「再生医療」という言葉が、より身近に感じられるよ
うになった。そこで、これから生まれてくる先端医療分野に対する患者、企業人の期
待感が高まっている。そこで今、再生医療を実現していくために、何が必要となるの
かを落ち着いて考えなければならない。再生医療の最終目的は「患者を治すこと」で
ある。そのため、治療に用いる細胞あるいは材料自身に、まず考えがいくことは当然
であり、これらに関する技術、方法論の研究開発が重要である。しかし、果たしてそ
れだけでよいのであろうか。答えは否である。
再生医療の治療概念は、生体組織の再生修復を誘導する細胞力によって病気を治すこ
とであり、再生誘導治療とも呼ばれている。そこで、その主役としての細胞をよく知
る必要がある。例えば、細胞自身、細胞の栄養である細胞増殖因子、細胞のすみかに
当たる細胞外マトリクスなどの基礎生物医学研究を進めることが重要となる。また、
細胞の栄養を「薬」と考えれば、それを開発するために創薬研究は不可欠である。薬
をうまく使うためのドラッグデリバリーシステム(DDS)技術、細胞のすみかとし
ての足場材料技術も大切である。細胞にかかわる基礎生物医学および創薬研究が、治
療技術とともに発展していかなければ、今後の再生誘導治療の大きな展開は期待でき
ない。
現在の細胞治療は、医師法の下、医療行為として進められている。薬事法で行われる
しくみがなければ、その治療法が大きく広がり、そこにビジネスチャンスが生まれる
可能性は低い。また、治療に直接に利用される材料技術は、その事業化にはかなりの
時間と資金が必要となる。それに比べて、基礎研究や創薬研究では、使う材料や技術
に対する法規制はなく、企業参入は容易である。治療、研究、創薬のいずれもが再生
医療分野である。今、それぞれの立場、手持ちの材料、技術から、再生誘導治療をホ
ンモノにするために何ができるかを真剣に考え、行くのか止まるのかを見定める時期
が来ている。
■ 京都大学 再生医科学研究所
■□ 田畑 泰彦教授 (工学、医学、薬学博士)
□□□ 研究室HP→http://www.frontier.kyoto-u.ac.jp/te02/index-j.php3
─────────────────────────────────
1981年 京都大学工学部高分子化学科卒業、同学医用高分子・生体医療工学
研究センター助手、米国MIT、ハーバード大学医学部客員研究員、同研究セ
ンター助教授。2000年より現職。大阪大学大学院医学研究系研究科教授(併任)。
工・医歯、薬学系14大学の非常勤講師
************************************************
最近は田畑先生にお会いするたびに新たなアイデアを聞きます。
切れない&どれも面白そうなところがすごいです。
主席研究員 松井
************************************************