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「ゆめ物語」で終わらせないために(第2回)

2006/09/12

田畑教授のコラム『「ゆめ物語」で終わらせないために』の第2回です。

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細胞治療に比べて、生体組織工学の研究は大きく遅れていると感じています。その第一の理由は研究者の数です。再生現象の解明のために、医学、生物学からの多くの研究者が再生医療分野に参入してきました。これに対して、もともと生体材料学の研究者は少ないうえに研究内容がより生物医学、臨床医学の色彩が濃いとなれば、人材、施設の観点からもその数が減るのは当然かもしれません。材料工学のプロを作るのは工学部です。しかし、大学入試でも生物を選択せず、大学でも生物の授業のない人たちに、どうすれば医療との接点について考えてもらうことができるのでしょうか?医工、産学連携が進み、研究施設、研究協力体制などの枠組みは以前に比べて整備されてきました。しかし、最も重要な人材の育成について、課題がほとんど解決されていないように思います。

企業の協力も必要不可欠です。医療材料関連企業は細胞やタンパク質を取り扱えるのでしょうか?タンパク質医薬に詳しい製薬企業は医療材料を扱えるのでしょうか?細胞を安全に扱える企業はあるのでしょうか?再生医療では、これまでとは異なったビジネスのインフラが必要となります。細胞に関する法規制なども含めて、細胞の規格化、商品化への準備も進められています。一方、細胞治療ではなく生体組織工学による再生誘導であれば、これまでの医療材料の延長線上であり、商品化へのハードルは低いのではないでしょうか?生体組織工学による末梢神経、血管、骨の再生誘導治療の臨床研究はすでに始まっています。産官学の協力体制がうまく機能することが早期の実用化には不可欠と考えています。

現在、再生医療の実現のために必要な要素が明らかになってきています。今こそ、これらの要素を真剣に考え、前に進むのか止めるのかを判断しなければ、再生医療は「ゆめ物語」に終わってしまうのではないか、と危惧しています。再生医療は生物の発生、分化メカニズムの解明ではありません。患者さんは新しい治療方法を待っています。

(了)
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次週も新コラムを掲載の予定です。




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コメント

nekuraさん (2006/12/11)

細胞増殖因子とそのキャリアの組合せであれば、従来の医薬品・医療用具の範疇で考えることが可能だとすれば、、法的整備への問題はないようですね。田畑先生が指摘の通り、①重要な人材の育成についてが遅れている、②産官学の協力体制がうまく機能してい等の問題点の解決が最優先課題のように思います。私はこれらの解決の為にはピッバーグメディカルセンターのような高度かつ優れた研究者が呼べる環境の医療施設創設が必要ではないかと考えます。そして産学官連携を上手くコーディネートしてくれる人材の養成も。


八木信彦@MedGELさん (2006/12/04)

nekuraさん、貴重な御意見ありがとうございます。再生医療に類型化される治療法のうち、細胞や組織を体外で加工するプロセスが不可欠となるものについては、御指摘のような面があるかもしれません。
一方、弊社で研究開発に取り組んでいる細胞増殖因子とそのキャリアの組合せであれば、従来の医薬品・医療用具の範疇で考えることが可能ではないか、と考えております。


nekuraさん (2006/12/01)

再生医療推進には、薬事法とは別の法制化が必要であり、先進的でかつ優れた議員の方々によるご尽力が大きいのではないかと存じます。その上で、医師会とのバランスを考慮した大企業的な巨大なメディカルセンター創設が不可欠ではないかと思います。議員と医師会へのご理解と真摯なアプローチしかないでしょう。。それが抜けているかと思います。いくら優れた医療技術でも。。それを受け入れる体制や認知がないと。。それは学会での評価でしかないと考えます。


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