目にはメドジェル (MedGel 事例紹介#8)
2008/11/18
こんにちは。
少しずつですが冬の足音が聞こえてきますね。
さて本日はメドジェルを使って
目で薬剤を徐放させた論文のご紹介です。
一口で目と言っても”見える”という機能を果たすために
複雑な構造をしています。
そしてその構造のために薬剤の投与が難しい臓器でもあります…
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目に薬剤を投与する場合は目薬や軟膏が用いられますが
角膜や強膜などの組織が
眼球内部への薬剤浸透を阻んでいる上に
常に涙で洗われているので
頻回、あるいは高濃度での薬剤投与が必要となります。
しかもこれは目の前半分だけの話で
目の後ろ半分(脳に近い部分)ともなると
目の表面から薬剤を届けるのは難しく
効率の悪い全身投与が必要となってしまいます。
最近では目の後ろ部分へ薬剤を投与するために
眼球内への注射なども行われていますが
治療を受ける側からすると、目への注射や手術なんて
1ヶ月に1回以下、出来れば一生に一度で終わりたいところです。
既に目でのDDS(drug delivery system)はいくつかあるのですが、
MedGelも目での薬剤徐放に使うことが出来ます。
既存の徐放基材に比べてMedGelは
・生分解性なので取り出さなくていい
・細胞親和性が高いので炎症が起こりにくい
・分解しやすいタンパク質などを安定化する
・薬剤を2-3週間かけて放出する(技術的には数か月も可能)
・複数の薬剤も徐放可能…
といった利点があります。
具体的な目への投与事例は…
➀ フィルム状のMedGelシート同等品(*)とEGFを角膜に貼り付け、角膜上皮の再生を促す(*未販売)
Controlled-release of epidermal growth factor from cationized gelatin hydrogel enhances corneal epithelial wound healing.
Hori K, Sotozono C, Hamuro J, Yamasaki K, Kimura Y, Ozeki M, Tabata Y, Kinoshita S.
J Control Release. 2007 Apr 2;118(2):169-76.
② 角膜基質から採取した細胞をMedGelシート同等品と角膜基質に移植、角膜基質の再生を促す
Tissue engineering of corneal stroma with rabbit fibroblast precursors and gelatin hydrogels.
Mimura T, Amano S, Yokoo S, Uchida S, Yamagami S, Usui T, Kimura Y, Tabata Y.
Mol Vis. 2008;14:1819-28.
② 角膜にMedGelシート同等品とbFGFを組み合わせて投与、血管新生を起こし、モデル生物とする
Experimental corneal neovascularization by basic fibroblast growth factor incorporated into gelatin hydrogel.
Yang CF, Yasukawa T, Kimura H, Miyamoto H, Honda Y, Tabata Y, Ikada Y, Ogura Y.
Ophthalmic Res. 2000 Jan-Feb;32(1):19-24.
③ 網膜にMedGel粒子同等品とbFGFを組み合わせて投与、血管新生を起こし、モデル生物とする
Cellular response in subretinal neovascularization induced by bFGF-impregnated microspheres.
Kimura H, Spee C, Sakamoto T, Hinton DR, Ogura Y, Tabata Y, Ikada Y, Ryan SJ.
Invest Ophthalmol Vis Sci. 1999 Feb;40(2):524-8.
③ 脈絡膜にMedGel粒子同等品とbFGFを組み合わせて血管新生を起こし、モデル生物とする
Effect of focal X-ray irradiation on experimental choroidal neovascularization.
Miyamoto H, Kimura H, Yasukawa T, Honda Y, Tabata Y, Ikada Y, Sasai K, Ogura Y.
Invest Ophthalmol Vis Sci. 1999 Jun;40(7):1496-502.
目でのDDSに関してはこちらの総説もどうぞ
Drug delivery from ocular implants.
Yasukawa T, Ogura Y, Kimura H, Sakurai E, Tabata Y.
Expert Opin Drug Deliv. 2006 Mar;3(2):261-73.
…歯にもメドジェルなのですが、
それはまた次の機会に。
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大手企業は様子見ムードが強かった幹細胞研究ですが
ついにファイザーが乗り出すようですね。
日本でも武田薬品がiPS細胞研究に関わるようですし…。
これを機会に基礎研究から実用へと加速すると面白くなりそうです。
研究員 松井