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組織工学の再生医療への応用

2006/09/25

田畑教授のコラムです。

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 再生医療とはどういうものでしょうか?これは、イモリのしっぽが再生する現象をわたしたちの体で起こし、病気を治すという新しい治療です。すなわち、細胞がもつ体を治す力(自然治癒力)を高めることによって体の悪い部分を再生修復します。この再生医療が実現できるようになれば、これまでの外科手術や組織、臓器の移植治療にならぶ第3の治療法となることは疑いありません。イモリのしっぽの再生には、いろいろな細胞が働いています。しかしながら、例えば、体を治す力のある細胞を取り出して、体に入れるだけでは、必ずしも生体組織の再生修復は望めません。これは、体の中では、細胞はその周りの環境と触れ合いながら生存、働いているからです。体を治す力のある細胞も例外ではありません。細胞がその周りの環境と触れ合い、働くしくみは徐々に明らかになりつつありますが、まだ、完全にはわかっていません。
体は細胞とその周辺環境の2つからできています。植物園芸に例えてみると、細胞は種に当たります。種をまいても、その周辺環境、つまり土、肥料、水、光などの条件が整っていなければ、きれいな花は咲きません。細胞でも同じです。細胞がうまく育ち、体をなおしてけるようなよい周辺環境をつくることが大切です。この環境を体にやさしい材料を用いてつくっていくための研究分野が組織工学です。細胞が育つあるいは正常に働くような環境を作るためにいろいろな方法を使います。1つ目は、細胞が好む材料からスポンジを作り、そのスポンジを用いて細胞の働きを高め、生体組織を治します。2つ目は、細胞が元気になるようなお薬(タンパク質や遺伝子)をうまくお薬を必要としている場所に効かせることです。体にやさしい安全な材料とお薬を組み合わせ、「必要な場所にうまく効かせる」ドラッグ(お薬)・デリバリー(配達)することです。

例えば、骨、血管、皮膚などの組織を作る働きをもつ細胞を育てる働きのあるお薬があります。お薬そのものは体の中では不安定なので、それを水に溶かして、体に入れるだけでは、お薬はうまく効きません。そこで、お薬の働きを高めるために、お薬を体の中で溶けていく材料の中にとじ込めます。このお薬の入った材料を体の中に入れると、時間とともに材料が溶け出し、中にとじ込められていたお薬が外へ放出されていきます。材料の溶け方が早いとお薬は早く放出し、ゆっくりと材料が溶けるとお薬はゆっくり長く放出されます。このようにお薬の放出量をうまく調節することによって、お薬の効き目を長く延ばすことができるようになります。このお薬を長時間放出できる材料を、お薬が必要な場所におくと、骨、血管、皮膚などを作る細胞が必要な場所でよく働くようになり、それらの組織が再生修復されます。体で溶ける材料は臨床への応用を見越してなるだけ安全性の高いものを選びます。また、材料と組み合わせるお薬も使えるものであれば、この方法は、どの病院でもできる簡単な再生医療となります。また、このお薬を放出する材料と上述したスポンジあるいは細胞と組み合わせることによって、より良く生体組織を再生修復させるような研究も進展しています。

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メドジェルでは、これらの研究で生み出された成果の早期実用化に向けて研究開発活動を進めています。




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